ボカシ山水型紙
材質:渋紙、寒冷紗
型彫師:横井型紙店(岩手県)
ボカシ山水型紙の裏側
ボカシ山水ガラス
山形県山形市で昭和12年から創業している有限会社矢口硝子店では、昔ながらの技法による「ボカシ山水ガラス」をお取扱いしております。
「ボカシ山水ガラス」は、渋紙の型紙を用いてガラスに図版を転写して描いたガラス絵です。
ボカシ山水ガラスは版画のように図版をガラスに転写する技法で作っています。
主に戦後の昭和の時代に日本の木造建築の欄間や雪見障子、茶箪笥などに嵌められていました。
ボカシ山水ガラスの技術と意匠
現在、ボカシ山水ガラス用の型紙を彫ることのできる型師は日本国内で数名ほどしかいません。
山形県の有限会社矢口硝子店で使用している型紙は、岩手県の横井型紙店が作成した型紙です。
しかし、型師はご高齢のために仕事を辞めてしまいました。
有限会社矢口硝子店ではその型師から最後の型紙を譲り受け、今でも昔ながらの「ボカシ山水ガラス」を製造しています。
ボカシ山水で使用する型紙の裏側には寒冷紗が施されてあります。
柿渋を染み込ませた型紙と寒冷紗が重なり合うことで、ボカシ山水ガラス用の型紙が崩れずに何度も版を重ねてデザイン性を保つことができます。
ボカシ山水用の型紙は約40回は使用できますが、使い続けるうちに型紙は痛んでしまいます。
型紙がなくなってしまえば、もう同じ図案を作ることはできません。
日本国内のガラス山水の型師はもう殆どが辞めてしまっています。
ですから、昔ながらの型紙を使用した「ボカシ山水ガラス」は非常に貴重な作品だと言えます。
有限会社矢口硝子店で使用しているボカシ山水用の摺加工機は、株式会社福山鉄工所(福岡県)が製造発売したFS-37型摺加工機です。
この製造メーカーは既になく、機械を修理できる人もごく僅かとなってしまいました。
今、現存している摺加工機が寿命が来てしまえば、ボカシ山水ガラスの風合いを再現することは困難になるでしょう。
平成以降、建築に関する政策の影響で日本の住宅事情も大きく変わりました。
木造家屋の欄間や雪見障子といった日本建築の意匠が消えゆく今、かつての住宅に嵌まっていたボカシ山水ガラスも消えてしまうかもしれません。
ぜひ、職人の手仕事の美しさを味わって戴ければ幸いです。
有限会社矢口硝子店
有限会社矢口硝子店がボカシ山水ガラスの加工に使用している機械は、
株式会社福山鉄工所(福岡県)が製造発売した、
FS-37型摺加工機です。